2012年2月20日

筑波大学・館山市連携講座「地震と津波-その発生メカニズムと予知-」   満席で熱のこもった2時間半!

2月19日(日)午後、館山市北条海岸にある筑波大学館山研修所で連携講座が開催され、小学校低学年の児童から高齢の方まで78名の市民受講生が集まり満席となりました。

筑波大学 館山研修所

この講座は、筑波大学・生命環境科学研究科地球進化科学専攻が行う「自然災害の発生メカニズムとその予知に関するインタープリターの養成プログラム」の一環として行われたものです。インタープリターとは解説者や説明者のことです。
若い研究者や学生たちに、一般社会などでインタープリターとしてわかりやすく説明できる能力や技量を高めてもらおうと、今回は中央公民館が募集をかける形で連携し、館山市民を対象に公開講座を行うことになったわけです。
このプログラムの責任者の指田勝男教授が進行役となり、講師役は大学の若い研究者や大学院生4人です。それぞれ持ち時間15分~30分で説明スタート。


八木勇治さん



■准教授 八木勇治氏
テーマ「東日本大震災を起こした巨大地震の特徴」


講義概要:今回の地震を解析した結果から、断層面がスリップする特異的な現象が起き、止まらなくなり長時間にわたり広がってしまったこと、宮城県沖に蓄えられた歪みが開放されたこと、房総半島にも近い茨城県沖の海溝の歪は開放されていないことなどを紹介。地震学は経験科学であり、今回の地震データを余すところなく今後の研究に役立てたいとの見解を示すとともに、今後は房総・茨城県沖について注視してゆきたいと語りました。




江崎隼輝さん
■大学院1年 江崎隼輝氏
 テーマ「世界で発生する津波地震の特徴」


講義概要:今回の地震で発生した津波の高さは40メートルを越し、過去の日本各地の記録された津波のなかでも最大級だったこと。揺れは小さくても異常に大きな津波を発生させる『津波地震』を紹介し、大陸プレートの境界近くの浅い領域で発生する様子など、津波地震のメカニズムとその恐ろしさを紹介し、「地震の規模に関わらず地震後はすぐ避難するべき」とまとめました。


 

■大学院1年 笠原天人氏
 テーマ「内陸で発生する地震の複雑な破壊」

笠原天人さん


講義概要:大きな津波を発生させる地震のタイプを断層形状や破壊の進み方などから紹介した後、マグニチュードが1ポイント上がるごとに断層面がすべり破壊される面積が飛躍的に大きくなる様子を説明。
 マグニチュード4では北条地区規模の面積のプレート境界の破壊だが、マグニチュード8クラスでは千葉県より大きな面積規模での破壊となること。
 また新たな解析手法などに取り組んでいる様子を紹介した。






 
■助教 藤野滋弘氏
テーマ「当方口方太平洋地震津波の実態と関東地方の歴史地震・津波」


藤野滋弘さん

講義概要:専門は地層学。津波は、通常の波の周期十数秒に比べ、十数分から数十分と長いこと。今回の地震でも十数分間陸に向かい流れ続け、毎秒8メートル以上の猛烈な速さで140トンもの岩を持ち上げたこと。2メートルの津波でも人間は全く抗うことができないこと。房総半島の石碑や伝承から、元禄地震では相浜地区で10メートルを越える津波があったこと。西川名地区には大正関東地震から7200年前まで幾つもの海岸段丘が残されていることなどを紹介。
すべての時代、場所に有効な津波対策は東北の言葉で「津波てんでんこ」。津波のときはお互い了解の上でバラバラに11秒でも早く高地へ逃げなさいという教えだ。津波は100年、200年おきに起こる。記憶を風化させないことが大事であると語った。


 
 以上4名の講義のあと、地震予知や対応などさまざまな質問が寄せられました。
「房総沖の歪はどうなっているのでしょうか?相模トラフは解明されましたか?」
「岩盤の壊れる際に出る電磁波で地震予知ができるのでは?」
「高地移転した地区はどのくらい時間がかかったのでしょうか?」
「お年寄りがいる家庭はどういう対応が必要でしょうか?」
「この地域の津波を予測したデータは市役所にもありますか?」
「高齢化・少子化のため、いざというときに避難しきれない。対策はありますか?」・・・

このほか一つ一つを紹介できませんが、生命や財産に関わるテーマだけに市民の皆さんの関心は高く、数多くの質問や情報提供が寄せられました。


時間半を超える講座となりましたが、数多くの質問に対し、誠意を持ってわかりやすく答えようとする若い講師の皆さんの緊張感ある説明に、最後まで多くの受講生が聞き入っていました
筑波大学の皆様ありがとうございました。