2012年2月6日

たてやま村歌舞伎保存会 設立八周年記念 立春公演

平成13年に行われた「南総里見まつりフォーラム」で、館山市民を魅了した鳥取県関金町(現倉吉市)の関金子ども歌舞伎

関金子ども歌舞伎から大きな刺激を受けて、平成14年の「南総里見まつりフォーラム」で、館山市藤原・古茂口の村歌舞伎が、約40年振りに復活しました。

藤原・古茂口の村歌舞伎を、館山の伝統文化として、守り、育て、伝えようと設立されたのがたてやま村歌舞伎保存会です。

平成15年11月の設立から早くも8年。

それを記念する立春公演が5日、千葉県南総文化ホール小ホールで開かれ、ベテランや子役の熱演に、観客からかけ声や拍手が沸きました。

公演に先立ち、山中貴会長の口上です。


「500円玉を包んだ1万円札のおひねりをお願いします。」とユーモアたっぷりの口上。


公演は、三番叟(さんばそう)からはじまりました。


たてやま村歌舞伎保存会の三番叟は、南房総市白浜町の乙浜に伝承されていた一人舞を原型に、保存会独自の工夫が加えられています。


演じたのは、北条小5年の中島玲緒さん。きらびやかな衣装で「翁」を務めました。


北条小5年の中島玲緒さん


舞台の四隅と中央を祓い(はらい)清め、四方から侵入する災いを除く四方鎮めの神楽三番叟を舞いました。



見事な舞いに、観客から暖かい拍手が。


幕間に、たてやま村歌舞伎保存会が、公益財団法人 日本生命財団からの助成を受けて制作した衣装や小道具の披露がありました。


公益財団法人 日本生命財団からの助成を受けて制作した衣装や小道具の披露

二幕は、たてやま村歌舞伎保存会の十八番である「奥州安達ケ原三段目」。

前九年の役(1051~1062年)、平安時代後期の奥州攻めの史実をもとに、源義家に敗れた奥州の安部頼時の息子安部貞任、宗任兄弟が再挙をはかり、義家を討とうとするストーリーです。


今回は、袖萩(そではぎ)祭文(さいもん)の段(だん)が演じられました。


前九年の役で破れた安倍(あべ)貞任(さだとう)の妻・袖萩(そではぎ)が娘・お君を連れて、父を訪ねます。

袖萩の父は、皇弟環宮の侍従長平傔仗直方。

袖萩は、父に背いて安倍貞任の妻になったため勘当されました。


袖萩役は鈴木ひとみさん。お君役は白浜小2年の吉井菜美子さん


前九年の役で敗れた夫の行動を訪ねて、流浪の末に盲目になった袖萩は、娘のお君に手を引かれ、物乞いをしながら雪の中、父のいる御殿にたどり着きます。

一徹な父直方は、娘に会おうとしないで、袖萩は三味線音楽である祭文に託して、詫びを言います。


袖萩の母浜夕役は女形の山中謙太郎さん(右から三人目)
直方役は鈴木正幹さん(右から一人目)。昭和30年代の藤原村歌舞伎の役者さんでした。
雪の降るなか嘆く袖萩、寄り添うお君。前半の見せ場の一つです。


貞任は、にせ勅使になって御殿に入り込み、宗任は捕らわれの身になって、はからずも夫婦兄弟がめぐりあうことになります。


貞任の弟安倍宗任役の山田千代子さん(右から一人目)


しかし、直方は皇弟失踪の責任をとって切腹し、袖萩も父の後を追って自害します。


八幡太郎義家役の松元景一さん(後ろ)

安倍貞任役の磯部和子さん



父貞任と娘のお君。実は、祖母である磯部和子さんと孫吉井菜美子さんの共演です。

八幡太郎義家は、にせ勅使を見破りますが、兄弟を見逃します。
兄弟は、後日の再会を約束し別れていきます。


これで終演。温かい拍手が鳴りやみませんでした。

千葉県内で伝承されている農村歌舞伎は、旧大栄町(成田市)の伊能歌舞伎と、たてやま村歌舞伎だけです。

この立春公演には、成田市の伊能歌舞伎保存会の皆さんも駆けつけ、交流を深めていました。

また、義太夫を務めたのは、埼玉県秩父郡小鹿野町の柴崎好一さん(小鹿野歌舞伎保存会)。
平成14年の藤原・古茂口の村歌舞伎復興公演以来、ご指導をいただいています。

今回の公演実現のため、独立行政法人 日本芸術文化振興会から助成をいただきました。


日頃からご尽力をいただいている、たてやま村歌舞伎保存会の皆さん。

そして公演実現のための支援をいただいた、 独立行政法人 日本芸術文化振興会公益財団法人 日本生命財団、そして小鹿野歌舞伎保存会の皆さま方。

館山の伝統文化継承のために、ありがとうございました。