2012年2月22日

企画展「海のタイムカプセル-水中考古学からのおくりもの-」が開催されています。

国の文化審議会は2月17日、元寇の史実を証明する多彩な遺物が海底から出土している長崎県松浦市の鷹島海底遺跡を国史跡に指定するよう、文部科学大臣に答申しました。

官報告示の後、水中遺跡としては初の国史跡に指定されることになります。

また今月10日には、水中考古学の研究者らが、静岡県熱海市の初島沖海底で、徳川家の家紋である三葉葵を彫り込んだ屋根瓦を確認しました。

江戸城の修理に使われる予定だったとみられ、城の修理や再建の様子を物語る貴重な手がかりになるとして注目されています。


近年、急速に進展する水中考古学の研究成果を紹介する企画展「海のタイムカプセル-水中考古学からのおくりもの-」が、東京都江東区の東京海洋大学越中島キャンパスで開催され、館山市の沖ノ島遺跡・栄ノ浦遺跡の出土品が紹介されています。




展示風景3点
アジア水中考古学研究所・林原利明さんからご提供いただきました。

館山市館山にある沖ノ島遺跡は、昭和62(1987)年に発見されるまでは未知の遺跡でした。

なぜかというと、標高0~-1mにある沖ノ島遺跡は、通常は海面下にあるため、干潮時にのみ砂浜にあらわれる特殊な遺跡だからです。

沖ノ島遺跡近景

千葉大学文学部考古学研究室と旧千葉県立安房博物館が共同し、平成15~17(2003~2005)年に発掘調査を行いました。 

平成15年の発掘調査のようす


この遺跡からは、縄文時代草創期末の撚糸文がある大浦山式・平坂式などの土器や、沈線文がある縄文時代早期初めの土器と、黒曜石製の石器、銛頭などの骨角器がみつかっています。それらとともに、多量のイルカの骨が出土していることから、沖ノ島遺跡はイルカ猟の拠点として利用されたと考えられています。

沖ノ島遺跡出土縄文土器(館山市立博物館藏)

沖ノ島遺跡出土イルカの骨(館山市立博物館蔵)


沖ノ島遺跡出土黒曜石製石器(館山市立博物館蔵)


遺跡が形成された縄文時代草創期末から早期の海水面は、現在より2~3m程低かったと推定されていますが、その後の縄文時代前期の縄文海進時には、現在より海水面が3~4mほど上昇していたと考えられ、その最盛時の海岸線は、現在の標高約27mの地点にあったと推定されています。
館山湾岸の遺跡・沼サンゴと縄文海進・地震隆起の関係
千葉大学文学部考古学研究室『千葉県館山市沖ノ島遺跡第23次発掘調査概報告』2006.3 44頁図17を一部改変


とすると、縄文海進最盛期の沖ノ島遺跡は、海水面-27mに沈んだことになります。

沖ノ島遺跡は、その後の海水面の低下と房総半島最南端部の激しい地震隆起によって再び汀線近くにあらわれた海底遺跡であるとされています。

この企画展では、縄文土器やイルカの骨、黒曜石製の石器、骨角器が展示されています。


展示中の沖ノ島遺跡出土縄文土器
アジア水中考古学研究所・林原利明さん提供

展示中の沖ノ島遺跡出土縄文土器・石器・骨角器・イルカの骨
アジア水中考古学研究所・林原利明さん提供


そのほか、館山市洲崎の栄ノ浦遺跡で、三瓶雅延氏が採集した縄文時代の黒曜石や、江戸時代の完形の灯明皿などが展示されています。



展示中の栄ノ浦遺跡採集の縄文土器・黒曜石・灯明皿
アジア水中考古学研究所・林原利明さん提供

灯明皿は、瀬戸・美濃産で、商品として運ばれてきたものが、海岸に打ち上げられたものと考えられ、沈没船に由来するものではないかと考えられています。


企画展「海のタイムカプセル-水中考古学からのおくりもの」

◆ 開催場所  東京海洋大学越中島キャンパス 越中島会館・特別展示室

◆ 開催日時  2012年2月15日(水)~3月25日(日)  開催時間:10時~16時30分
           (休館日:2月24・25日、3月9~12日)
◆ 主催     特定非営利活動法人アジア水中考古学研究所

◆ 展示内容
全国の海から引揚げられた文化遺産が多数展示されています。

[おもな展示遺跡・遺物(予定)]

(沖縄県)オーハ沖海底遺跡,(長崎県)鷹島海底遺跡・前方湾海底遺(福岡県)相島沖瓦・玄界島沖唐津焼・岡垣浜陶磁器・福岡市内碇石,(静岡県)初島沖海底遺跡,(東京都)神津島沖海底遺跡,(千葉県)沖ノ島海底遺跡,(北陸)能登半島珠洲焼・海岸採集陶磁器 ほか


また、2月26日(日)には、【シンポジウム】第6回水中文化遺産と考古学シンポジウム
が開催されます。

詳しくは、HPをご確認下さい。