安房学講座は、館山市文化財保護協会と館山市立博物館で組織された安房学講座実行委員会が開催する講座です。
今回は専修大学文学部の湯浅治久教授を講師に迎え、「安房の棚田と中世房総の村」と題してお話をしていただきました。
講師の湯浅先生は日本中世史がご専門で、今年の3月まで市川歴史博物館の学芸員をされていました。
講師の湯浅先生。ありがとうございました! |
講座のテーマは「棚田」。棚田というと、鴨川の大山千枚田をイメージすると思いますが、歴史的に棚田の成り立ちを追ってみると、房総には他にも棚田が存在するということが確認できるそうです。
また、棚田は「丘陵台地型」、「山沿型」、「谷底平地型」、「山間型」、「臨海型」の5つの型に分類され、大山千枚田は「丘陵台地型」と「山沿型棚田」に該当するということでした。
棚田学会という学会もあり、湯浅先生も所属されていらっしゃいます。
棚田学会のPRをする湯浅先生。 手にしているのは学会誌『日本の原風景・棚田』! |
はじめに、現在も安房の棚田として有名な「大山千枚田」をとりあげました。
中世には大山千枚田は大山寺の敷地内にあり、棚田の開発や維持に大山寺が関与していたことが推測できるそうです。大山寺が雨乞いの霊場であることも、棚田との関わりがあるのではないかということでした。
次に、中世房総の村の成立を地形図などを参考に解説していただきました。村が成立するポイントは「水」であり、良質な水を確保できる河川周辺の谷奥が開発され、そこに棚田もつくられました。村が開発されると周辺に寺社ができ、仏像や棟札が残されます。それらの記録によって、その村が中世以来の村であるということが確認できるということです。
そして最後に、安房国朝夷郡久保郷の棚田についてお話していただきました。この久保郷は、これまで上総国に比定されてきましたが、金沢文庫に伝わる年貢の帳簿に出てくる地名を検証した結果、安房の久保郷(現在の南房総市久保・南房総市千倉町久保周辺)であるということが確認されました。現在も「真野」や「安馬谷」といった地名が残っていますが、このあたりの谷が中世以来の棚田であるということでした。「宣旨枡」という古い枡を使用していることも、この棚田が古い棚田であることの証になるそうです。
現在、大山千枚田は多くの人々の手によって保存・活用されていますが、このような棚田は中世の頃から存在していたということがわかりました。
今回も多くの方にご参加いただきました! |
次回の第8回安房学講座(今年度最終回です!)は、國學院大學神道文化学部教授の笹生衛氏を講師に迎え、「富士山の古代信仰」と題して講演を行います。1/11(土)13:30から海辺の広場レクチャールームにて行いますので、ぜひご参加ください。よろしくお願いします。
※1月の安房学講座は第2土曜日です。ご注意ください。