2011年9月18日

JR113系車両の引退と昭和44(1969)年 鉄道の電化完成によりかなった館山市民の夢

国鉄時代から使用され、JR内房線などで活躍してきた113系車両の定期列車の運行が8月末で終了しました

113系近郊形電車

113系車両は、昭和38(1963)年に登場した近郊形電車で、東海道線や横須賀線などで活躍し、JR東日本では、房総各線が最後の活躍の場になっていました。

青とクリーム色の塗装は、横須賀線の名称から、“スカ色(しょく)”の呼び名で親しまれています。

平成19年のちばディスティネーションキャンペーンにあわせて、内房線を走った蒸気機関車D51は、普段は電車が通る架線の下を、ゆっくりと走りました。

SLの汽笛は、郷愁を誘いましたが、館山を電車が走るようになったのは、さほど昔のことではありません。

それは、当時の房総西線(現在の内房線)木更津-千倉間の電化が完成した昭和44年7月11日からのことで、千葉県内ではこの時はじめて、113系電車が導入されました。


昭和44年7月11日 電化開通初日の館山駅
昭和44年7月11日 電化開通初日の館山駅
165系急行形電車(左)と72系通勤形電車(右)

それまでの蒸気機関車が牽引した客車やディーゼルカーに比べて、電車の静かさは印象的だったようです。



房総西線を走っていた8620形蒸気機関車

房総西線を走っていたキハ10形気動車


昭和44年7月15日付の『広報たてやま』には、113系の試乗記が紹介されています。


昭和44625日館山駅 電車試運転の様子
113系近郊形電車(左)と165系急行形電車(右)


「静かに止まった電車に乗ると、新しいもの特有の香りがたちこめ、ピカピカしたシュラルミンと青い座席がほどよく調和してデラックスな感じと共に、これは日本の力だと誇めいた感情が流れる。座席はクッションもよく、静かな発車だった。快適だ。・・これは日本人みんなのものだ。大切にのらなければと思う。そして利用する各人が、気をつけたらどんなに日本中で経済()になるだろうか、などと考えが飛躍していく。」


昭和44625日館山駅 電車試運転の様子 
電車は急行形の165系。右はキハ55形気動車
ディーゼルカーに比べ電車の床は高いため、電化に合わせホームが高くなった
左端に見えるのは蒸気機関車のための給水塔

昭和44625日館山駅 電車試運転の様子 電車は急行形の165系

ディーゼルカーに比べ電車の床は高いため、
電化に合わせてホームを高くするための工事中の様子



昭和44年7月15日付の『広報たてやま』には、当時の時代背景を読み取ることができる記事がありました。

「あなたの力を万博へ」
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「ためになる夏季講座」
演題「アポロ11号時代」 アポロ11号に佐藤(栄作)総理大臣が次のことばを託して月に届けるという。「人類月到達の偉業を祝す。」まさしく、今は世をあげて宇宙科学の時代であり、現代に生きる誰もが知識と関心をもたねばならない。

「戦没者の遺族の方へ」
昭和12年7月7日以降の戦没者につきましてはすでに1200余名の英霊に対し、護国の勲功をたたえて、それぞれの勲章の伝達がおこなわれましたが、すんでいない方も一部おいでのようです。

戦後日本が高度経済成長を成し遂げ、それを国際的に大きく印象付けるための一大国家事業が昭和45年の大阪万国博覧会でした。

昭和44年はまさにその前年。その一方で、戦後未だ24年。
社会に戦争の痕跡が、色濃く残っていたことを読み取るができます。


当時、「東京から2時間」が館山市民の夢でした。


電化完成から3年後の昭和47年7月15日には、東京駅に総武線の地下ホームが開業し、館山駅と東京駅がはじめて直結されました。

それまで、房総西線の始発駅は両国駅でしたが、この日から内房線と改められ、東京駅始発の特急列車が運転されるようになりました。

皆さんご存知の特急「さざなみ」が、所要時間1時間50分と、はじめて2時間を切る時間で館山と東京を結び、市民の夢をかなえたのです。

電化された当初から、42年間内房線を走ってきたスカ色の113系電車。
40代後半以上の世代には、一抹の寂しさを感じる方もいるのではないでしょうか。


電化完成時、新たにつくられた館山駅北側にある留置線

発売直後に乗車券は完売しましたが、JR東日本千葉支社が、9月23、24日の両日、113系車両引退記念イベント「THE FINAL!! 113!」を実施します。

内房線・外房線コースの実施は、9月24日(土)。

両国を出発した内房線コース113系が館山駅に到着するのが、午後0時16分。両国に向けて出発するのが、午後1時44分

両国を出発した外房線コース113系が館山駅に到着するのが、午前11時47分。両国に向けて出発するのが、午後1時18分

ひょっとすると館山駅で、113系2編成が並ぶ最後の雄姿を見ることができるかもしれません。


113系の臨時快速「白い砂」
海水浴シーズンに、海水浴のメッカ内房の各駅と東京駅を結びました。
平成10年を最後に運転が休止されました。