2011年11月23日

指定文化財の修理/館山市有形文化財(書籍典籍等)「洲崎大明神縁起」の修理が終わりました。

国・県・市の指定文化財については、それぞれ法令により所有者が管理しなければならないとされています。

そのため、所有者は文化財の維持管理や修理の経費についても、自ら負担しなければなりません。

しかし、その維持管理や修理の費用が多額の場合などは、その経費の一部に充てていただくために、それぞれ法令に基づき、国(文化庁)・県・市が補助金を交付しています。

平成23年度、館山市の補助事業として行われたのが、館山市洲崎(すのさき)の洲崎神社が所蔵する、館山市有形文化財(書籍典籍等)「洲崎大明神縁起(すのさきだいみょうじんえんぎ)」の保存修理事業です。
洲崎神社所蔵の縁起は3種類あります。

万治2年(1659)の『房州安房郡洲崎大明神縁起』(巻子)と、宝暦3年(1753)の『洲崎大明神由緒旧記』(大和綴)には、安房忌部(いんべ)氏の祖神である天太玉命(あめのふとだまのみこと)の后神天比理乃咩命(きさきがみあめのひりのひめのみこと)を祭神とすることや、石橋山の戦に敗れ安房に逃れた源頼朝が、祈願して源氏再興をはたしたことなどが記されています。

これに対し、『洲崎大明神縁起』(巻子)では、大蛇の害に悩んで七日七夜の祭祀を行い、これを退治しようと現れた蛭児尊(ひるこのみこと)を祀(まつ)ったのを由来としています。書かれた年代は不明ですが前出のふたつの縁起より素朴な内容を持つ点で注目されます。


修理前の『洲崎大明神縁起』

 3種類の縁起とも、全体に汚れと、折れが多く見られたため、洲崎神社が東京の専門業者に依頼をし、今年の5月から修理を行っていました。

その修理が終わったため、東京都羽村市の表具司処独歩から、洲崎神社に納品と完了の報告がありました。

 
独歩堂の三島さんから説明を聞く氏子の皆さん

修理前の調査の結果、いずれの縁起も昭和47(1972)年の修理時に本紙が小さくなっていたことがわかったため、修復した結果、3種類の縁起の大きさは次のとおりになりました。

『洲崎大明神縁起』(巻子)
[修復前]0.86尺(26.1㎝)×3.15尺(95.5㎝) [修復後]0.87尺(26.4㎝)×3.23尺(97.9㎝)

『房州安房郡洲崎大明神縁起』(巻子)
[修復前]0.80尺(24.2㎝)×7.10尺(215.2㎝) [修復後]0.80尺(24.2㎝)×7.23尺(219.1㎝)

『洲崎大明神由緒旧記』(大和綴)
[修復前]0.90尺(27.3㎝)×1.30尺(39.4㎝)  [修復後]0.91尺(27.6㎝)×1.34尺(40.6㎝)

修理が完了した『洲崎大明神縁起』


子どもたち、孫たちの世代に、地域の文化財を継承しようと行われた洲崎神社の3種類の縁起の修理。

それを行った氏子の皆さんの想いと実行力には、頭が下がります。
ありがとうございました。