2011年11月30日

シリーズ社会科見学16 歴史を活かしたまちづくり/昭和をキーワードに蘇った商店街-大分県豊後高田市

今、全国各地で数々の取り組みが行われている“歴史まちづくり”

地域固有の歴史と伝統を反映した人びとの活動と、その活動が行われてきた歴史上価値の高い建造物や、その周辺の市街地とが一体となって形成されてきた環境を維持、向上させて、後世に継承しようとする“まちづくり”が進められています。

大分県杵築(きつき)市は、江戸時代の城下町にふさわしいまち並み景観の再生に取り組み、
大分県日田市では、江戸時代から大正時代にかけての豪商をはじめとする商家の景観を活かしたまちづくりが進められていました。

今日紹介するのは、大分県北部にある豊後(ぶんご)高田市“昭和の町”です。


昭和のまちの拠点施設「昭和ロマン蔵」


江戸時代から明治、大正、昭和の30年代にかけて、豊後高田の中心商店街は国東半島一の賑やかな"町"として栄えていました。

豊後高田「昭和の町」は、この商店街が最後に元気だった時代、昭和30年代の賑わいをもう一度よみがえらせようという願いがこめられ、平成13年に着手されたまちづくりです。





昭和30年代以降、人口は減少し続け、昭和40年の宇佐参宮鉄道の廃線やモータリゼーションの進展による人の流れに変化が起こったことなどから、中心商店街も急速に衰退。

かつての賑わいも「昔話」となり、ついに、「商店街を歩くのは人よりも犬や猫の方が多い」、「鉄砲を撃っても人にあたらない」とも表現される様相となったそうです。

衰退したまちの再興への道を模索する中、活性化へのテーマを「中心市街地」と決定。

市街地の古代から近代に至る歴史の調査から始まり、既存の市街地、その歴史的背景、まちづくりの先例といったそれぞれの要素を考慮し検討する中で、古くて不便だとばかり思っていた既存商店街が、実は歴史と伝統のある昭和の姿をとどめた魅力があることがわかり、全国的にブームになりつつあった「昭和」がこのまちのテーマとなりました。

「昭和」というテーマの決定後は、行政・商工会議所・商業者の三者一体で1年をかけて「まちなみ実態調査」を実施。


徹底したまちの分析から既存商店街の建物の約7割近くが昭和30年代以前のものということが判明し、歴史を振り返る中で市が最も元気であった昭和の商店街再生に向けた取り組みが始まりました。





まず「昭和の建築再生」として、各商店のパラペットを外し、以前の看板をむき出しにすることで昭和の街並みを再現。







次に「昭和の歴史再生」として、各店に伝わる珍しいお宝を一店一宝として展示。






そして、「昭和の商品再生」として、その店自慢の商品を販売。




あげパン、鯨かつなど昔の給食が食べられます


そして最後にお客さんと直接対話し、ふれあうことによる昭和30年代と変わらないおもてなしをする「昭和の商人再生」といった、4つのキーワードでまちづくりが進められました。

当初、年間5万人を見込んで取り組みが進められ“まちづくり”は、「昭和」のブームもあり、その目標は2年目には達成され、3年目には予想を大きく上回る20万人もの観光客が訪れるようになりました。


ボンネットバスで近くの歴史・自然遺産の周遊ができます。




ひょっとすると、館山の中心市街地商店街の建物も、昭和30年代以前のものが少なくないかもしれません。

豊後高田の“昭和のまちづくり”は、館山の“歴史まちづくり”を進める上で、参考になるかもしれません。

その一方で、アニメ映画 「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」のセリフを思い出しました。

あらすじは次の通りです。

突如出現したテーマパーク「20世紀博」で、大人たちは現実の生活を投げ出し、童心にかえって楽しんでいた。だがその裏には、絶望の21世紀を捨て、希望に満ち溢れていた20世紀を永遠に存続させようとする、秘密結社イエスタデイ・ワンスモアの計画があった。

このままずっと20世紀が続くかに思えたその時、未来を守り、21世紀を生きるため、しんのすけが立ち上がる。という内容です。

「いい大人が、何を…」。とお叱りを受けるかもしれませんが...

しんちゃんの父、野原ひろしのセリフ「俺は家族と一緒に未来を生きる!」には、涙したことがあります。

“郷愁”は大切な気持ちです。

しかし、昔を懐かしむばかりではなく、未来に向きあうことも大切なことです。

歴史を活かしながら、その基盤の上に、新しい文化を創造する取り組みを行ってこそ、子ども、孫の世代に継承する“まちづくり”になるのではないかと考えさせられました。


◆ シリーズ社会科見学

シリーズ社会科見学15  歴史を活かしたまちづくり/登録文化財を活用したレストラン-大分県日田市(11/28)
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シリーズ社会科見学13 國學院大學伝統文化リサーチセンター資料館/つとるば遺跡出土品(11/20)
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シリーズ社会科見学9 青木繁生誕の地-福岡県久留米市 その4「坂本繁二郎生家」 (9/30)
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