古墳時代の中頃である5世紀代になると、新しい生活文化が波及していきます。それは鉄製農耕具の発達による生産力の向上や、カマドの出現による食文化の変化などですが、ムラの神まつりで、滑石(かっせき)製の模造品が使用されはじめたことも大きな特徴のひとつです。
それ以前は、本物の用具をまつりで使っていました。鏡も剣も勾玉(まがたま)も、何もかも実際に使える実用品でした。そのことは古い古墳や、福岡県沖ノ島の祭祀遺跡をみるとはっきりわかります。
しかし神まつりが、だんだんと一定のやり方で行われるようになると、使う用具が形だけのものになってしまうのです。
こうして手軽に入手でき、しかも加工がしやすい材料を使った、滑石製模造品がまつりの道具として使われるようになります。
そして6世紀代になると、土製の模造品を用いた神まつりが盛んに行われるようになります。
安房の土製模造品の典型的なセットは、勾玉(まがたま)形・丸玉形・鏡形・有孔円板(ゆうこうえんばん)に手捏(てづくね)土器が加わったもので、遺跡のなかには後世の神社に近いところにあるものもあります。
土製模造品に象徴される安房の祭祀遺跡のなかでも、他の遺跡にはない用具がみられるのが、館山市沼のつとるば遺跡です。
7世紀代の土師器(はじき)や大量の手捏(てづくね)土器とともに、有孔円板(ゆうこうえんばん)や勾玉(まがたま)形、丸玉形、鎌状などの模造品のほか、四鈴鏡(れいきょう)・五鈴鏡・七鈴鏡、五鈴釧(すずくしろ)、鐸(たく)などの振る音に関係する土製模造品があります。
前置きが長くなりましたが、今回は、つとるば遺跡出土の五鈴鏡と(鐸を鳴らす)舌を所蔵している國學院大學伝統文化リサーチセンターを社会科見学しました。
JR渋谷駅東口から、徒歩10分ほどのところに國學院大學はあります。
國學院大學学術メディアセンター |
伝統文化リサーチセンター資料館は、平成20年に開館した新しい館ですが、昭和3(1928)年に設けられた「考古学陳列室」を前身とする大学博物館です。
常設展示は3つのゾーンに分かれ、「祭祀遺跡に見るモノと心」「神社祭礼に見るモノと心」「國學院の学術資産に見るモノと心」というテーマが設けられています。
古墳時代の資料は、茨城県常陸鏡塚古墳出土遺物や、国重要文化財の石枕(いしまくら)を含む市原市姉崎二子塚古墳出土遺物、多数の鏡類、バリエーションに富んだ埴輪(はにわ)類など、豊富な質と量を誇っています。
そのなかでも、国内唯一の資料として注目されるのが、長野市片山出土の挙手人面土器(きょしゅじんめんどき)です。
一緒に出土している土師器(はじき)から、古墳時代中期の4世紀後半のものと考えられています。
数多く収蔵され、展示されている祭祀考古学関連遺物のなかに、館山市沼のつとるば遺跡から出土した、土製の五鈴鏡・(鐸を鳴らす)舌・勾玉・丸玉があります。
キャプション「11」がつとるば遺跡の土製模造品 上段が土製勾玉・丸玉 下段左が土製五鈴鏡、右が舌 |
國學院大學が所蔵する、館山市沼のつとるば遺跡出土品は、館山市立博物館の平成6年度企画展「神々の風景 -古代のカミへの捧げモノ-」で、館山に里帰りしたことがあります。
利用案内「國學院大學伝統文化リサーチセンター資料館」
通常開館日:月曜日~土曜日
通常開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
通常休館日:日曜日・祝日
入館料:無料
入館料:無料
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